下馬評通り、SP、FSとも真央選手とヨナ選手の一騎打ちとなりました。
ショートプログラム
浅田真央
SPでは正直、真央選手の方がヨナ選手より勝っていたと思います。ヨナ選手は地の利で若干GOEやPCSで点数が上げられた感じがします。
パーソナルベルトには4点ほどたりませんが、スコア的に65点であればフリーでの勝算を持てたでしょうから、ダウングレードがあったとはいえ決して悪い出来ではありませんでした。
だた、ここ何試合か見てきて思うようになったのは、やはり真央選手のSPの音楽が、何となくPCSにも影響がでているのかなと思い始めました。
盛り上がりの少ない曲ですので、自然と抑揚が感じにくい面があり、インパクトに欠けてしまうのかなと思います。しっとりとした音楽でも、『ノクターン』では優雅な面と、ラストのステップ部分では、しっかりと盛り上がってきますので、今季の『月の光』は真央選手の色が出しにくい感じがします。
ただでさえ普段からヨナ選手のスピードあるスケーティングに比べ真央選手はスピード感に若干劣る点で、余計にインパクトに欠けてしまうのでしょう。もったいないなと思います。
課題の3Lzもきちんと跳び分けてきましたね。加点も0.8とまずまず良い点数ではないでしょうか。公式練習から自分でも信じられないくらい高く跳べていたそうです。本当に調子の良さを実感できていたのでしょう。この自信が最後まで保ち続けられたことは、また一歩大きく飛躍したと言えます。
それにしても3F-3Loの3Loでのダウングレードは痛いですね。ここまで厳しいものかと改めて実感しました。ーが当の真央選手はいたって冷静でしたね。もっと高く跳べば大丈夫とのコメントがありました。マイナス思考でないところがアスリートにとって、非常に重要です。モチベーションをいかに保ち続けられるか、オリンピックはまだ来年ですが、前年に課題を見つけ、いい経験をしていると、焦りが出てこないのでしょう。勝算があるのかもしれないですね。
今年のGPFでの真央選手は最初から最後まで非常に落ち着いていました。これはいいことです。彼女の中で何かが芽生えているような気がします。
キムヨナ
初めのコンビネーションジャンで跳んだフリップジャンプ、エッジ判定はセーフでしたが、厳しい見方をすれば、本番(今のところワールド)でいきなり!ぐらいは付いてもおかしくないかもしれません。
トレースの描き方が明らかにルッツとは異なって直線ですので、eまでは付けられないと思いますが、彼女もワールドタイトルを何が何でも手に入れたい訳ですから、スタイルは変えず今のままで行くでしょう。
3Lzがシングルになってしまったことで、そのあとに続くスパイラルで明らかに動揺しているのが見てとれました。3Lzが点数の稼ぎどころだというのは彼女自身が熟知していることですが、賢明な彼女ならここでミスを寸止めしているところを、国の威信を背負いながら戦うという相当なプレッシャーが負の連鎖となり、会場の圧力にのまれスパイラルで動揺が引き続いてしまったのでしょう。
初めのアラベスクで既に今までのスケアメ・中国杯とは異なり、顔の表情が曇っていましたし、余裕がない分顔をあげて滑る間が少なくなっていました。今の今までそれなりにパーフェクトに決めていたショートで明らかにミスと分かるシングルジャンプでしたので、今までにない相当大きな動揺があったのでしょう、それがチェンジエッジミスという形で現れ、レベルを3に下げる結果となり、もったいない取りこぼしでした。
前のワールドでもルッツの転倒でスパイラルの3秒保持が出来ず、レベルを下げてしまっていました。失敗の後の立て直しに弱さがあるかもしれません。ーがしかし、国の期待を一人で背負っている訳ですから、仕方がない面もあります。かつての伊藤みどりがそうでした。
しかしスピンは本当に素晴らしかったですね。特にレイバックスピンでは彼女が唯一レベル4を獲得しました。
フリースケーティング
浅田真央
女子では国際大会の一つのプログラムで2回、3Aが認定されたということで、その後の歴史にしっかりと名を残すことになるでしょう。
また、オリンピックまでにこの目標が達成できたことは大きかったと言えます。トリプルアクセルには今まで散々紆余曲折してきましたが、ここにきて安定感が増し、彼女自身、この1~2年に至る中で成功させる道筋みたいなものが分かってきたのではないでしょうか。
3連続コンビネーションジャンプの後のフライングシットスピンでレベルが3となっていまいした。チェンジエッジがうまくいかなかったのでしょう。
目に見えるミスとして唯一のミスは後半のフリップジャンプでの転倒でしたが、疲れのせいもあったと思います。フリップは彼女が得意とするジャンプですが、回転が足りずに転倒するという彼女にしては珍しいミスでした。でもこのミスが後に尾を引かないのが真央選手の長所です。3Tも2Aもきっちりと決めましたし、盛り上がりを見せるストレートラインステップでも力を抜くことなく、かなり集中していたのではないでしょうか。最後の最後まで気を緩めることなく演技をやりきることができました。
緊張感から解き放たれ、喜びを満面に表すのではなく、課題を克服することが出来たことで、納得の表情を浮かべていたのが印象的でした。
キムヨナ
6分間練習からあまり調子が上がっていなかったそうです。しかし、冒頭の3-3をしっかりと決めてきたのはさすがですね。真央選手の3A-2Tの合計点数よりも上にいくという、今シーズンならではのジャッジングでした。
苦手のループジャンプはやはり避けてきましたね。苦手のサルコウ&ルッツを克服してきた真央選手に対し、苦手ジャンプをクリアできずにオリンピックに向かう、この差は大きいと思います。今だけ良いのであればそれも良いでしょう。またシーズン後半に故障と泣く泣く闘ってきたヨナ陣営にしてみれば、昨年、一昨年の二の舞は避けたいでしょうし、何としてもワールドは取っておきたいタイトルですから、今季、ループはもうないかもしれませんね。
国民の期待=優勝という大きな目標を勝手に与えられ、絶対に負けられないというプレッシャーは相当な緊張感を生み、演技後半ではそれが過剰に体力を奪い、ジャンプを2つミスするだけにとどまらず、二つのスピンでもレベル3となる結果を招きました。
サルコウジャンプでの転倒が明暗を大きく分けたことを、彼女自身も認識できたと思います。後のフライングコンビネーションスピンでは、キャメルの回転が明らかに足りていませんでした。最後のチェンジフットコンビネーションスプンまでも、キャメルでのチェンジエッジがうまくいってなかったことで、レベルを落としてしまいました。失敗を振り切ることが出来ずにいるのは彼女の今後の課題と言えるでしょう。
ーが、あの、国を挙げて彼女に対する一種の選挙運動みたいな騒ぎ方は異様に思えます。あれでは、プレッシャーも力に変えることは難しいのではないでしょうか。ヨナ選手のお母さんらしき人が映っていましたが、顔を手で覆う姿はもう演技を見られる心境とは思えませんでした。
ES細胞の黄教授の時もそうでしたが、韓国初のノーベル賞をあの方に勝手に期待した挙句、彼に見げ道をなくす結果となり、ねつ造に走らせる悲劇が生まれました。
課題を克服することを目標に戦う真央選手に対し、勝つことを余儀なくされたヨナ選手はいつの間にか心の余裕を失っていたのかもしれません。勝たなければいけない、勝って当然というのはアルベールビルでの伊藤みどりさんの時と酷似しています。
今回真央選手は目標を明確にしていました。目先の勝利より、3Lzのエッジを正確に跳ぶ、そして3Aを2回&苦手の3Sを成功させるという目標を明確に掲げていました。その結果に優勝があるということを熟知していたので、演技終了後の力強いこぶしは達成感の表れでしょう。緊張感からの解放ではありませんでした。
そしてまた新たな課題として3-3のフリップループが挙げられます。2つ目のループジャンプは来年に引き続く課題ですね。真央選手は一つ一つコツコツと遠回りするタイプですから焦る必要はないと思います。心配はあるでしょうが、目標を明確にするということは勝利への道筋につながる大事な過程です。克服してほしいですね。
グランプリファイナルプロトコル:http://www.isuresults.com/results/gpf0809/
2008/12/14 01:58
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